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1月22日、本学にて、文芸学部文化学科心理・社会コースが開催した「東大阪市における就学前障害児の発達支援」というシンポジウムとワークショップの御報告をします。
文芸学部では心理・社会コースを昨年の4月に発足させました。4年間の課程で、心理学、社会学の基礎的なトレーニングをみっちり積むことを目的としています。
地域に根ざした教育・研究推進 心理・社会コース初めての企画
また一つの特色として、地域の現場との結びつきを強めることを考えています。それは、現実に即した教育・研究を求めてゆく事と同時に、学生たちの進路に心理学や社会学の勉強とつながった何がしかの目安を見つけることも目的としています。実際に、地域の機関から研究の場を与えて頂いた例もありますし、地域の施設でボランティアを始めた学生もいます。
私事になりますが、近畿大学に奉職する以前に発達心理学の研究の傍ら、当時の大阪府東大阪児童相談所、東大阪市家庭児童相談室で、発達障害に関わるアルバイト等をしていたことがあります。また現在は、東大阪の施設でほぼ定期的に子どもたちと遊ぶボランティアをしています。
東大阪という地域での発達支援とは浅からぬ縁を授かっていると感じますし、東大阪に在る大学の一員として今後何らかの形で地域に貢献しなくてはならないとも考えています。そんな折に、東大阪市から平成16年度の地域研究助成金を受けることができました。
今回のシンポジウムとワークショップはその地域研究の一環として、そして心理・社会コースの最初の催しとして企画しました。そのテーマに就学前発達障害児の発達支援という問題を選び、東大阪市に所在する関係機関の方々を中心にお話を頂戴しました。当日は約60名の参加者に足を運んで頂きました。デイ・ケアを設けたので、お子さんを連れた家族の方々にも来てもらえました。
今日、就学前障害児の発達支援においては、支援費制度や発達障害者支援法等に基いた新しい枠組みが構築されようとしており、様々な問題に直面しています。障害児の状態像、発達の道筋は極めて多様であり、支援する制度や事業体にも多様な対応が求められます。その中で家族の要求に対して的確に応えてゆくためには、子どもや家族の側の課題と、行政・事業体の側の課題を整理しなおす必要があります。
子どもや家族にとっては、それぞれの障害に応じた発達支援の形を見極めることが大きな課題であり、発達障害の専門的な情報が求められます。そして、コミュニケーションや生活習慣を支援する最新の技法を、それぞれの子どもに合わせて生かしてゆく必要があります。一方、行政・事業体の側では、国・自治体・民間の間での役割の改変が行われようとしており、当事者間の調整が求められます。その際、それぞれの役割や方針を、より広い観点からまとめる必要があるでしょう。
情報交換で本当に必要なケアを
本企画の目的は、子どもの視点、家族の視点、行政の視点、事業体の視点といった視点から発達支援を総合的にとらえて、一堂のもとに情報交換を行い、異なる立場の相互理解を図ることです。加えて大事なのは、行政・事業体の間で何が問題となりどのような解決が図られているのかを家族が知ることでしょう。利用者や市民が制度・事業体の情報全体にアプローチできる道筋を考えるというのも、もう一つの目的です。
シンポジウムは午前のシンポジウムIと午後のシンポジウムIIの2部構成でした。
シンポジウムIは「子どもと家庭に必要な発達支援」と題打って、本学教職教育部の加藤豊比古氏に司会をお願いしました。まず東大阪市療育センターの岡井哲明氏に臨床心理学の立場から、本学医学部の栗木紀子氏に児童精神医学の立場から、発達とその障害、そして子どもたちへの関わり方についてお話頂きました。続いて、2人のお母さんから自閉症のお子さんとダウン症のお子さんを育てる経験談をうかがいました。
シンポジウムIIは「社会における発達支援の課題」という題で中谷が司会させて頂きました。子どもの成長という軸に沿った順番で、担当する施設・機関の方々に話題提供をお願いしました。
最初は乳幼児健診の業務などを中心とする東大阪市保健所の山本クニ子氏、次に相談やグループ指導を業務とする東大阪市家庭児童相談室の高橋潔江氏、続いて通園療育を行う東大阪療育センターの木村史郎氏、そして保育所での障害児保育に関わる東大阪市保育室の細木日出子氏からお話を頂きました。その後小休止をはさんでさらに、地域療育等支援事業に関わる障害児者相談センターの江口広氏、最後に子どもの問題全般の機関である大阪府東大阪子ども家庭センターの渡辺治子氏からお話してもらいました。
シンポジウムの後のワークショップは、以下の3つのテーマに分かれて参加者が自由に討議するものでした。A.発達障害の理解 B.子どもと家庭 C.行政・制度・事業体・地域と発達支援。時間内で話しきれない方々には、続く懇親会でゆっくりお話頂けたと思います。
全体に、答えを出そうというのではなく考えを練り合わせる、という方針で話を進めてもらいましたが、凡そ成功したと思います。質疑応答では財政の話からIT利用の話まで多岐にわたる話題が出されました。家族の方からも発言を頂きました。
東大阪市では関係諸機関の連携が概ねうまくいっているようです。それは担当者の長い経験と毎日の努力の産物ですが、そのような専門職の人数は十分と言えないと感じました。シンポジウムを聞いた学生達の中から、頑張って専門職を目指す者も現れて欲しいと思います。
それから2人のお母さんの経験談は、多くの参加者の方々に深い感銘を与えたようです。そのような親子の発達支援、育児支援というものが、多様な社会の中の豊かな文化として、子ども、家族、地域の間で醸成されることを強く願います。
準備段階から学生諸君をはじめ多くの方のご協力を得ることができて、催しは無事に終わりました。この場を借りて御礼を申し上げます。またこのような企画を重ねてゆきたいと考えますのでよろしくお願い致します。なお、後日詳しい報告書を刊行いたします。
(近畿大学大学新聞 第454号 6面 平成17年4月1日発行)
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