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学術・研究
水産研究所 奄美実験場開設
高い海水温度 クロマグロの完全養殖に期待

 本学水産研究所奄美実験場の管理棟が完成し、3月13日、今後の無事と研究の進展を願って竣工の神事が行われた。

実験場のいけす
花天湾に据えられた実験場のいけす

 同実験場は、奄美大島にある鹿児島県瀬戸内町花天(けてん)に所在。現地では、すでに水産研究所奄美事業場と地元漁協との共同で、養殖事業を進める「奄美水産養殖科学センター」が平成10年発足しており、本学からは技術員が常駐。花天湾の12基のいけすで、マダイ稚魚の出荷や、クロマグロ、イシダイなどの養殖・研究を進めている。

 管理棟の完成で、研究もさらに本格化する見込みで、和歌山県串本町にある同研究所大島分室で長年研究を続けてきた「クロマグロの完全養殖」の達成などが期待されている。現地の技術員・向井良夫さんによると「クロマグロは、平成10年度から養殖を始めた300尾をはじめ、計3,000尾を飼育。成長の早さは本州と比べ約1.5倍。特に冬の海水温の高いのが一因だと考えられている」という。

 奄美近海はクロマグロの産卵場所でもあり、養殖した成魚から、産卵、人工ふ化、稚魚育成、成魚へのサイクルを繰り返す前人未踏の「クロマグロ完全養殖」の達成も近いと期待は膨らんでいる。

 本学水産研究所がクロマグロ養殖への取り組みを始めて約30年。試行錯誤で改良を重ねた独自の方法で、昭和54年に、産卵からはじめて、人工ふ化、稚魚までの育成を世界で初めて達成した。

 その後、平成7年には人工ふ化させたクロマグロが246日間生存し、日数、大きさともに世界最高記録を樹立。現在はその記録をはるかに上回る5年を超える魚が生存し、しかも産卵が可能な状態になっている。

 和歌山県串本町は、クロマグロ養殖に適する海域の北限といわれ、そこで本学は世界初の数々の実績を挙げてきた。今後、条件の良い奄美大島での研究が進めば、一気に完全養殖や事業化への確立を加速する可能性がある。 奄美実験場では、クロマグロの他、イシダイ、クエ、シマアジなどの研究を進めつつ、地元の瀬戸内漁協とともに養殖事業を展開。研究成果が地域産業の発展、活性化に役立つよう努力していく方針。

 「奄美実験場」は本学の施設としては最南端のものとなり、これで北は、北海道恵庭市の「資源再生研究所」から南は奄美大島の鹿児島県瀬戸内町まで、本学の展開が広がった。     

熊井英水・水産研究所所長の話 
 奄美本島の南に浮かぶ加計呂麻島との間には全長30に及ぶリアス式の海峡が横たわり、水深30m以上と深い上に穏やかで、清浄海水に加え冬季の最低水温も20C以上と、水産養殖上優れた立地条件を備えており、今後の水産研究所の展開に極めて重要な拠点となり得る可能性ありと判断して実験場立地を推進してきた。 

 誘致の話があってから紆余曲折10年、ようやく管理棟の竣工を見るに至ったが、これは一重に地元瀬戸内町ご当局、漁業協同組合そして鹿児島県の深いご理解とご支援によるものと感謝している。これから本格的な研究に着手することになるが、幸い平成10年から先行している試験養殖の経過も良好なので亜熱帯海域の特徴を生かした研究を進め、地元の漁業振興や活性化にも貢献していきたい。

 特に本州では水温などの影響で成長の遅い高級魚の養殖やクロマグロ受精卵の安定確保などの研究が大いに期待できる。

恵まれた自然−奄美大島
 鹿児島市と沖縄本島のほぼ中間に位置し、鹿児島市からは約400km離れている。南北約55kmの長さを持つ島で、北部にある奄美空港から車で2時間あまり南に走ると、気候おだやかな静かな町・瀬戸内町が現れる。同町は島の南端に位置し、南方には加計呂麻島が浮かぶ。湾になっているため、このあたりの海はおだやかだが、水深は岸から数十m離れただけで、4、50mにもなり、クジラやイルカも現れる。

 奄美大島は、サンゴ礁が生息する美しい海やマングローブの群生があり、大自然に包まれている。島は起伏に富んでおり、標高約700mの湯湾岳もあり、亜熱帯気候ながら、降雪を記録したこともあるほど。また、奄美大島、徳之島でしか見られない黒褐色の毛を持った「アマミノクロウサギ(特別天然記念物)」は有名だ。

 島の特産はサトウキビ。そのサトウキビを原料にした黒糖焼酎は島の酒で、日本酒はほとんど飲まれていない。長寿の島として有名な徳之島でも飲まれ、健康によいのではと、全国的に愛飲家が増えている。

(近畿大学大学新聞 第423号 2面 平成13年5月1日発行)

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