漢方医学の原典
漢方では、各種の生薬の組み合わせ方によって作用や目的が変わってきますので、これらの古典の処方集はとても重要なものです。
傷寒論(しょうかんろん)…主に急性熱病の症状と治療法が述べられています。
金匱要略(きんきようりゃく)…主に慢性疾患です。これらは紀元200年頃、後漢の時代の張仲景という人によって書かれたものといわれています。そして現在も、これらの本に収載されている処方が広く使用されています。
時代が下がると、さらに多くの処方集が著わされました。千金方(唐)、外台秘要方(唐)、和剤局方(宋)などで、これらの中にも、現在も使用される多くの重要な漢方処方があります。
どんな病気の人が受診しているのですか?
一般に漢方が得意とする疾患としては、成人病などの慢性疾患や更年期障害があげられますが、東洋医学研究所では、特にアトピー性皮膚炎や喘息、鼻炎などのアレルギー性疾患の方が来院され、効果をあげています。
また、癌などの手術前後の体力回復や、免疫力の増加にも漢方薬の有効性が認められつつあり、このような目的で受診される方も多くなっています。
肩こり、神経痛、腰痛などの方には、漢方薬とともに、はり・灸治療を行う場合もあり、しびれや痛みなど症状の改善に役立っています。
リウマチや腎炎の場合は、必要に応じて漢方薬とステロイド剤や免疫抑制剤などとの併用療法も行われ、それらの使用量を減らしたり、副作用を軽減していくようにします。
このように東洋医学研究所では、必要時には各科専門医と連絡しながら、内科、皮膚科、整形外科、婦人科、精神神経科などの領域を超えた総合的な診療を行っています。これは漢方診療の特徴が「局所でなく身体全体を診ながら治療していく」ものだからです。
より良い生薬を選ぶことの重要性… 漢方薬の効き目は生薬に左右される
漢方薬の原料となる薬(生薬)の大部分は中国産で、これ以外に日本産、韓国産、タイ産などがあります。
同じ名前の生薬でも、品質はピンからキリまであり、中には基原(その生薬を得るところの植物、鉱物、動物の学術的分類)の異なるものが流通していることもあって、治療効果に大きな影響を及ぼしていると考えられています。このような状況の中で、正しく、より良い生薬を選ぶことは至難で、長年の経験と知識が必要です。
東洋医学研究所では、それぞれの生薬に規格を設けて、適合したものを使用しています。
その規格とは、日本薬局方(公定書)の理化学的検査などの基準に従ったものであり、さらに色、味、匂いなど、五感による古代からの鑑別方法も参考にして、最も優秀な生薬を選択できるように努めています。
東洋医学研究所で使用している生薬は、成分の抽出を良くするために細かい刻みにしています。さらに、乾燥度合いで薬効に差がでるものなどが判明しましたので、その点にも注意して調製するように、生薬供給者側への提言を行っています。
現在のところ、生薬のほとんどは野生品に頼っています。そのため年々、その数は減少し、品質にもバラつきが生じ、治療効果を一定に保つことが難しくなりつつあります。そこで東洋医学研究所では、煎じ薬が安定供給できるように、いろいろな対策を講じています。
最近は、生薬の栽培化も進められています。しかし、収穫量だけを考えたり、主要成分の含有量のみを多くするような改良を加えることで、いびつなものが商品となっている場合が多く見られ、慎重に対処しなければなりません。本研究所では、人参など一部の繁用生薬を生産地指定し、そこで収穫されたものを薬にする調整加工の方法までを生産地と直結して一貫した管理を行えるよう努力しています。
また、古代の文献を研究することで、生薬のその当時の基原(真の基原といえるもの)と産地を解明し、それと同じものを使用できるように努力しています。
【関連記事】
・漢方治療で豊富な完治実績 各科領域を超えた総合診療
東洋医学研究所(下)
・漢方豆知識(上)
(近畿大学大学新聞 第421号 2面 平成13年3月1日発行)
|