近畿大学薬学部で最先端技術である
 「ヒト抗体医薬品」の研究を行う
 細胞生物学研究室の大学院生に
 「研究」の魅力についてききました
失敗から新しい発見が生まれることも!!
細胞を培養し、何度も実験を繰り返しながら
抗体や抗原の作用メカニズムに迫っていく。

細胞生物学研究室の学生たちは、抗体医薬品の開発や免疫メカニズムの解析などに取り組んでいる。「薬を通じて、何万、何億という人々を救える可能性があるのが医薬品開発の醍醐味」と語ってくれたのは中埜さんだ。彼の研究テーマは「癌の転移」。転移しやすい癌細胞の遺伝子やタンパク質の性質を研究、癌の転移のメカニズム解明に取り組んでいる。「抗体が抗原(外敵)と結合することで、癌の転移が抑制される可能性もあるんです。それがわかると将来的に医薬品として開発される道も見えてきます」。抗体が結合する抗原を調べるのは研究の一つの段階で、最終目的は抗体医薬品の開発にあるのだという。病原微生物などが体内に侵入すると、その病原体の持つ抗原だけに働く抗体がつくられ、抗体が抗原に結合することで病原体の活動を抑制する。そういったメカニズムを応用したものが抗体医薬品だ。
その抗体医薬品を研究テーマとしているのは鶴岡さん。「既存の抗体医薬品の中でも、より副作用が少ないヒト型のものが研究対象。ヒト抗体が癌細胞と結合した際にどのように働くかなどの性質を研究し、完全ヒト型の抗体医薬品の可能性を探っています」という。「相手の癌細胞は生き物。同じ条件下で実験を行ったつもりでも、毎回いろんな結果がでてきます。それが難しい点であり、また実験のおもしろさ。そこからなぜそういった結果が出たのかをつきつめて考える。失敗から思わぬ結果が得られることもあります」。

一方、植村さんの研究対象は、免疫の中でも自然免疫のシステムだ。年老いて不要になった細胞や害になる細胞を取り除くため、「細胞の自殺:アポトーシス」が起きますが、その死細胞をきれいに掃除するマクロファージなどの作用メカニズムを研究している。「どのようにマクロファージに『食べろ』というシグナルが伝わるのかを調べるためにはマクロファージが『食べる』ために必要なタンパク質(抗原)に結合する抗体を作製することが必要になります。ある時、抗体作製のための遺伝子組み換えタンパク質を大腸菌を使って作っていたのですが、なかなかうまくいかなくて。ところが先生のアドバイスで哺乳類の細胞を使ったところタンパク質を数多く発現させることができました。苦労すればするほど、実験を成功させた時の喜びは大きいですね」。

ディスカッションや発表に刺激を受け
そこから実験のヒントが得られることもある。

研究テーマは違っても、抗体の作製など実験手法は共通している3人。実験の進め方に関する意見を交換したり、協力することも多いという。「報告会が毎月あり、自分の研究成果をみんなの前でプレゼンするのはおもしろいですね。ディスカッションをすることで研究のヒントが得られることも少なくありません」と中埜さん。毎日が同じことの繰り返しではない、そんな実験がおもしろいという。「大きな実験には緊張感が伴いますが、自分の予測通りの結果が得られるとうれしいですね」。自分たちの研究が医薬品開発への一歩へとつながり、多くの人に貢献できる。それが3人にとって大きな励みとなっている。


教授 益子 高

抗体医薬品開発に直結する研究に取り組んでおり、教授が研究代表者の『受容体型細胞表面タンパク質と、そのシグナル伝達系を標的とした医薬品開発』というテーマは『私立大学バイオ・ベンチャー研究開発拠点』に選出されている。

癌やリュウマチに効く「ヒト抗体医薬品」も!!
新しい発想で実験にチャレンジしよう。
新しいバイオ医薬品として注目を集めている抗体医薬品は、特定の抗原に働きかけるため、副作用が少ないといった特色があります。特に、今まで治療が難しかった癌や、リュウマチなどの免疫系の疾患にも有効で、多くの期待を集めています。私たちの研究室で行っているのは、新しい抗体医薬品の開発に直接つながる研究。新しい分野だけに、柔軟な発想やアイデアが必要とされています。「この実験をすれば、こうなるに違いない」と決めつけてしまうのではなく、自ら考え実行する。「ヒト抗体医薬品」の開発を最終目的に、ともに頑張ってみませんか。


学術フロンティア推進事業予算の補助によりDNAシーケンサー(Applied Biosystems 3130ジェネティックアナライザ)のアップグレードを行ないました。本機は4本のキャピラリーを備え、700塩基以上の解析が可能となりました。是非、有効に活用していただきたく連絡申し上げます。

平成19年4月
細胞生物学研究室 益子 高

平成12年度に採択されました『バイオベンチャー開発事業』の平成16年度予算にて既に配備いたしましたセルソーター(J-SAN)に、UVレーザーユニットを装着するアップグレードを、平成17年度の学術フロンティア推進事業予算にて完了いたしました。本アップグレードにより従来以上の多彩な細胞分取が可能となりましたので、是非、有効に活用していただきたく連絡申し上げます。

平成17年12月
細胞生物学研究室 益子 高

   

 文部科学省より平成17年9月9日付で(17文科高第404号)『受容体型細胞表面タンパク質と、そのシグナル伝達系を標的とした医薬品開発(研究代表者:近畿大学薬学研究科 益子 高)』が平成17年度私学学術研究高度化推進事業(事業区分:フロンティア)として採択された旨の連絡がありました。
  今後、益子教授の細胞生物学研究室ホームページ上で活動状況を報告いたします。現在は、申請に用いました学術フロンティア構想調書と共同研究プロジェクト調書の概略を公開いたしております。

平成17年11月


研究の一部を紹介

 自然界にヒントを得ながら、
 創薬に結びつく有機化学反応による合成を研究
 天然活性物質学研究室  松尾 圭造 教授
 動植物や微生物など、自然界には薬になり得る活性を持つものが数多く存在します。それに創意工夫を加えて活性を高めたり、毒性を減少させることで、副作用のない「より良い薬」が開発されていきます。私たちの研究室は、そういった「より良い薬」を簡単に数多く、人間の手で作り出すために有機化学反応を利用した合成研究に取り組んでいます。そのための基本的なテクニックや過去のデータの集積・分析はもちろん、応用して独自のアプローチができるよう、発想力や創造性を重視した指導を行っています。

 生体内分子の機能を解明しながら、
 分子レベルで病気や薬への理解を深める。
 病態薬理学研究室  川畑 篤史 教授
 ポストゲノム時代に入り、種々の生体内分子がどの臓器でどのように働いているかを解明することが現在の大きな研究テーマとなっています。私たちの研究室では、国内外の研究室や製薬会社とも協力しながら、生体内の受容体やメッセンジャーが神経系、消化器、呼吸器などの機能をどのように制御し、病気の発症にどう関っているかを解析しています。研究を行う過程で病気や臓器の働きを分子レベルで解明・理解し、疾病や医薬品の成り立ちを根本的に知ることは、薬剤師として患者と向き合う際にもきっと役立つことでしょう。

近畿大学発ベンチャー企業
 ―(株)ア・ファーマ近大―
 ア・ファーマ近大は近畿大学発ベンチャー企業で近畿大学薬学部薬用資源学研究室が中心となり、農学部、生物理工学部、附属農場、東洋医学研究所が連携して「柑橘類の薬用研究・開発プロジェクト」をスタートさせ,人々の健康と美容のために天然物を利用した機能性食品の研究開発を行っています。薬用資源学研究室では、長年日本人に馴染みの深い温州ミカンの有用性を研究し、青い時期の早摘みミカンに新しいパワーを見出しました。「ブルーヘスペロンキンダイ」は有用成分のヘスペリジン・ナリルチンの含有量が最も高くなる青い時期に果実を収穫し、青ミカンまるごとを独自の手法によって加工し商品化されたものです。

 高速糖鎖切断装置(国際特許出願済)
 ―AutoGlycoCutter―
 生物情報学研究室では、生体内におけるホルモン作用の調節やがん細胞の転移など、生体情報の受容と伝達に重要な役割を担う糖鎖の構造等の解明に取り組んでいます。同研究室では、高速糖鎖切断装置も独自に開発し、国際特許を出願済みです。