ATHENS 2004 近畿大学アテネ五輪出場選手応援サイト
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アテネレポート
水上競技部監督 田中 穂徳
(1)
 照りつける太陽が肌を焼く。オリーブの林を抜けて頬をかすめる風は心地よく、空は澄み切ったエーゲ海のように青い。人々はおおらかで、ゆったりとした歴史の中に生きる誇りを持って生活しているように見える。ギリシャ共和国、アテネという街。

 第28回を数えるスポーツの祭典オリンピックが今年、その生誕の地アテネで開催された。
アテネ競技場写真

 202の国と地域のアスリートが28競技・301種目でそれぞれの思いを胸に競う。

 世界最大であり最高峰のこの祭典に、近畿大学から卒業生を含め10名の選手を送り出すことができた。

 これは、選手自身の努力はもとより、これまで彼らに対しあたたかいご支援、時に厳しい指導をいただいた方々の力なくして成し得ない成果であることは、誰よりも選手たちが痛感しているであろう。

 競泳競技には日本チームのキャプテンを務める本学職員(水上競技部コーチ)山本貴司(経営学科卒)を筆頭に同職員(コーチ)の中西悠子(経済学科卒)、経営法学科3年の奥村幸大、同2年の寺川綾の4人が出場し、連日世界の強豪としのぎを削った。

 北島選手の金メダル獲得に弾みをつけた日本チームのキャプテン山本に、秘めた闘志を感じつつ、まずは200mバタフライ決勝のスタートを待つ。

 山本はレース前「勝ちに行きます!」と力強く語った。彼の相手は、今大会金メダル5個を獲得した怪物マイケル・フェルプス選手(アメリカ)。だが山本の姿から気負いは感じられない。我武者羅に結果を追ったシドニーから4年を経て、心身ともに成長した頼もしい山本の姿がそこにはあった。静かだがこれまでに感じたことのない山本の自信を肌で感じ、何故か落ち着いてレースを待つことができた。
 スタートの合図とともにフェルプスがレースを引っ張る。山本は予選・準決勝同様に自分の思い描いたレースを展開し、3位で150mを折り返した。長身フェルプスとの差は体一つ。スタンドの観衆誰しもがフェルプスの勝利を確信しはじめた時、壮絶な勢いで横を追い上げる山本の姿が人々の目に飛び込んできた!ラスト25mその差は体半分までに迫り、勢いは明らかに山本。スタンドの全員が総立ちになり怪物と挑戦者の勝敗を見守る。10m・・・5m・・・肩口に迫る山本を視界に捕らえたフェルプスが必死で逃げている。

 会場の熱気が一瞬ため息となった。フェルプス1位、山本2位。着差僅かに0.5秒でのフィニッシュだった。「怪物」の圧倒的な勝利を信じていた観客たちが追い詰められる「人間」フェルプスを目の当たりにし、山本の勝利を一瞬思い描いた「ため息」だ。

 1.54.56オリンピック新記録・アジア新記録。この価値ある銀メダルに勝者フェルプスにも負けぬ称賛の拍手が山本へ送られる。フェルプスも自己の持つ世界記録まで0.17秒という最高のレースだった。
電光掲示板写真
筆者と山本貴司選手
筆者と山本貴司選手
 山本は200mのレース直後、私達のもとへやって来た。これまで見たことのない満面の笑みで駆け寄り、そして、これまで人前で見せたことのない涙を流しながら「今まで支えてくれた皆さんのお陰で、獲れました。ありがとうございます」と囁き会釈をした。

 山本の言う「支えてくれた人」の重さは、他の選手の想いとはまた違う。

 ともに戦い、彼を支えてくれた妻すずさん(旧姓千葉)の満面の笑みが、彼の笑みと重なる瞬間だった。
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